1棟投資の失敗パターン5選、買ってはいけない物件の特徴で見落としがちなこと

WELLSTAR AGENCY COLUMN

「表面利回り9.2%、築23年、駅徒歩8分」──この数字だけを見て契約書に印鑑を押す人が、今も後を絶たない。区分マンションより規模が大きい分、失敗したときの傷も深い。1棟投資の現場で15年見てきた経験から言うと、失敗する案件には判で押したような共通パターンがある。

「利回り」という数字が隠しているもの

不動産業界で使われる「利回り」は、ほぼ例外なく表面利回りだ。年間賃料総額÷購入価格で計算され、管理費・修繕積立・空室損・税金は一切考慮されていない。地方の木造アパートで表面10%という物件が出回るが、実質利回りに換算すると5〜6%台に落ちることは珍しくない。

さらに見落とされがちなのが「満室想定」の罠だ。募集広告に使われる賃料は現況賃料ではなく、売り手が設定した希望賃料のケースがある。近隣相場より15〜20%高い賃料で計算した「想定満室収入」を分母に使った物件がいまだに流通している。購入前に周辺の実際の成約事例賃料を調べることが、最初の防衛線になる。

表面利回り(売り手提示) 9.2%
空室損・管理費控除後 7.1%
修繕費・固定資産税控除後 5.8%
金利・諸費用控除後(実質) 3.4%

上の数値は地方木造アパートの典型例だが、実質3%台では融資の金利負担を賃料収入だけで賄えなくなる物件も出てくる。「キャッシュフローがマイナスでも節税になる」という説明で区分マンションを売られた経験がある読者なら、この構造に既視感があるはずだ。

築古×RC造という組み合わせが落とし穴になる理由

築35年超のRC造一棟マンションは、見た目の利回りが高く、戸数も多く、「スケールメリット」という言葉で勧められることが多い。だが融資面と修繕面の両方で、木造アパートとは異なる地雷を踏む確率が上がる。

融資期間と担保評価のズレ

金融機関がRC造に設定する法定耐用年数は47年だ。残存耐用年数が10年を切ると、融資期間も10年前後しか引けなくなる。仮に2億円の物件を10年ローンで組めば、年間返済額は約2,400万円になる計算だ。表面利回り8%、年間賃料1,600万円では毎年800万円の赤字になる。

さらに築古RCは担保評価が積算評価で著しく低く出る。土地値は出ても建物評価がほぼゼロ、というケースが多く、融資額が購入価格の60〜70%止まりになることも珍しくない。自己資金を4,000〜6,000万円用意しなければならない物件は、実質的に富裕層しか買えないが、そのことを説明せずに「融資が引けます」とだけ言う業者が存在する。

47年
RC造の法定耐用年数
60〜70%
築古RCの融資掛け目の目安
10年
残存耐用年数が短い場合の融資期間の目安

大規模修繕の費用感が現実と乖離している

築30年超のRCで外壁・防水・給排水管の大規模修繕を行うと、20戸規模で3,000〜5,000万円かかることがある。修繕積立が組まれていない1棟物件では全額オーナー負担だ。売買時には「修繕費用込みの利回りです」と言いながら、その積算根拠が曖昧な場合は要警戒だ。実際に工事業者へ見積もりを取るだけで、物件の本当のコストが見えてくる。

立地評価の「見えない罠」──駅徒歩と需要の関係

「駅徒歩8分以内、人口30万人超の市」という条件を満たしていても、空室が埋まらない物件がある。人口総数ではなく、賃貸需要を構成する人口の動きを見ないと判断を誤る。

具体的には、単身世帯数・20〜40代人口の増減・外国籍居住者の比率・大学や企業の移転計画が、賃貸需要の実態に直結する。Suumo・アットホームで同エリア・同間取りの募集件数と成約日数を調べると、需要の強弱は数日で把握できる。募集件数が多く、長期間掲載が続いている物件が集中するエリアは、見かけの利回りが高くても空室リスクが高い。

埼玉県川口市内で8室の木造アパートを2021年に購入したB氏(40代前半・メーカー勤務・共働き・子ども2人)の事例が分かりやすい。築21年・購入価格6,500万円・表面利回り8.7%で、駅徒歩6分の条件に魅力を感じて判断した。だが購入後に調べると、駅から物件方向へ向かう道は幹線道路から外れており、同じ駅徒歩6分でも反対方向の区画より賃料相場が約8%低いことが分かった。入居付けに苦戦し、購入から18か月で2室空室・1室賃料減額交渉という状況になった。CF(キャッシュフロー)は購入前の試算より年間約120万円悪化している。

「駅徒歩は地図の直線距離で見ていました。現地を歩いてみて初めて、道沿いに何もないことに気づいた。内見のときに夜の雰囲気も確認すべきでした」

B氏・40代・メーカー勤務

出口を考えずに買う──売れない物件の共通点

不動産投資は「買う・運用する・売る」の三段階で完結する。ところが多くの初心者は売り方を考えないまま物件を選ぶ。出口が機能しない物件には、いくつかの共通した特徴がある。

まず、融資が付かない物件は売れない。買い手が現金購入者に限定されると、購入者層が極端に狭まり、価格交渉でも著しく不利になる。木造で築22年を超えると融資期間が10年を切り始め、次の買い手も苦労する。売却時に自分が苦労することは、今の自分が購入するときにも苦労することと表裏一体だ。

次に、戸数が少ない物件は流動性が低い。2〜4戸の小規模アパートは、法人投資家にとって規模が小さすぎ、個人投資家には融資評価が取りにくい。売り出してから6か月以上成約しないまま値下げを繰り返すケースは、こういった物件に多い。

さらに見落とされがちなのが「相続税評価と実売価格の乖離」だ。相続税評価を下げる目的で購入した物件が、実際の市場価格と大きくかけ離れているケースがある。評価圧縮の効果は享受できるが、手放したいときに価格が大幅に下がるリスクがある。買う前に「5年後に売るとしたらいくらか」を自分で試算しておくことは、出口戦略の第一歩だ。自分が買える物件規模の把握には1棟投資 購入力診断で30秒で確認できる。

管理会社の質が運用を左右する──契約前に見るべき数字

1棟投資において、管理会社の良し悪しはキャッシュフローに直接影響する。管理委託費の料率だけを比較しても意味がない。入居率・家賃回収率・クレーム対応速度・退去後リフォームのコストと期間、これらの実績数値を開示できる管理会社かどうかが選定の基準になる。

サブリース契約(一括借り上げ)はリスクを減らすように見えるが、保証賃料の減額条項が6〜12か月ごとに設定されているケースが多く、築年数が上がるほど減額幅が拡大する傾向がある。また、管理会社が撤退または倒産した場合、保証は消滅する。サブリースの甘い見積もりを信じて購入判断を下すことは、分譲マンションの節税スキームと構造的に同じ罠に入ることを意味する。

サブリース契約の「保証賃料」は固定ではない。減額条項の発動条件と過去の改定実績を必ず開示させること。これを出せない管理会社の物件は再考の余地がある。

融資審査を軽く見た結果──頭金の出どころが問われる時代

2018年のスルガ銀行問題以降、金融機関の融資審査は明らかに厳格化した。年収800万円以上あっても、既存の区分マンションローンを複数抱えていると、1棟物件への融資が通らないケースは珍しくない。

大阪市淀川区に物件を持つC氏(50代前半・IT系経営者・既婚・子ども1人)は、区分マンション3戸のローン残高が合計約8,000万円ある状態で1棟アパートの購入を計画した。物件は築18年・木造・12室・購入価格1億1,500万円・表面利回り8.1%で条件は整っていた。しかし既存債務の返済比率が金融機関の基準を超えており、地銀3行・信金2行すべてで否決された。最終的に、区分マンション2戸を売却して既存ローンを圧縮した上で再申請し、購入まで14か月を要した。その間に当初の物件は他の買い手に渡っており、代替物件の利回りは0.6ポイント低下していた。

頭金の出どころも厳しくなっている。親族からの贈与・法人からの貸し付け・暗号資産の換金──これらは「自己資金」とみなされない金融機関が増えている。2年以内の通帳残高推移を提示できる、純粋な自己資金の蓄積が審査の前提になっている。

始め方や融資戦略の具体的な整理ははじめての1棟投資 無料相談で個別に話せる。

見落とされがちな「物件固有のリスク」チェック

利回り・立地・融資に目が行くと、物件そのものの固有リスクがすり抜けることがある。現場で見てきた中で、特に後から発覚して問題になりやすい項目を整理した。

確認項目 見落としのリスク 確認方法
接道・再建築可否 再建築不可の場合、担保評価が著しく低下・出口が限定される 役所の建築指導課で接道確認
境界確定の有無 隣地との境界未確定は売却時に紛争リスク 測量図・境界確認書の有無を確認
土壌汚染・埋設物 旧工場跡地・ガソリンスタンド跡地は汚染リスク 土地履歴・ハザードマップ・旧住宅地図で確認
賃借人の契約内容 定期借家か普通借家か、礼金の帰属が不明な場合あり 全戸の賃貸借契約書の写しを取得
過去の事故・孤独死 告知義務の範囲が曖昧・心理的瑕疵が賃料に影響 管理会社・売主への直接確認+重要事項説明での質問
給排水管の老朽化 築25年超の鋼管は漏水リスクが高い・交換費用が高額 修繕記録・管理報告書の確認

再建築不可の物件は購入価格が安いが、建て替えができないため担保評価が低く、売却時の買い手も限定される。表面的に利回りが高く見える物件のうち、一定数はこの再建築不可が理由になっている。重要事項説明書の「接道」の欄は、物件を見に行く前に必ず確認したい箇所だ。

また、全戸の賃貸借契約書を確認しないまま購入する投資家がいるが、入居者の一人が30年以上居住している場合、賃料が周辺相場の60〜70%のまま固定されているケースがある。退去を促す法的手段は極めて限られ、その部屋の収益性は事実上改善できない。売主の言う「平均賃料」が現況と乖離している可能性は、全戸契約書の確認で初めて把握できる。

失敗した人に共通する「判断プロセス」の欠陥

これまで挙げたような個別の落とし穴も問題だが、失敗した案件を振り返ると、判断プロセス自体に共通した欠陥がある。それは「売り手から得た情報だけで判断している」という構造だ。

不動産仲介業者は売買を成立させることで報酬を得る。物件の問題点を積極的に説明するインセンティブは、構造的に薄い。これは業者を責めているのではなく、その立場の人間の情報には限界があるという現実の話だ。

自分で現地に複数回行く(昼・夜・平日・休日)、賃貸管理会社に直接「このエリアで空室が決まるまでの平均日数」を聞く、近隣の同条件物件の成約賃料をレインズ(不動産流通標準情報システム)で調べる──これらは買い手が自分でできる情報取得だ。売り手の資料を受け取ってから購入判断するまでの間に、独自調査の時間を意識的に組み込むことが、失敗した人と失敗しなかった人を分ける最大の差異だった。

1棟投資はレバレッジが大きい分、正しく機能すれば資産形成の速度が大きく変わる。だが同じレバレッジが、判断ミスの損失を何倍にも増幅させる。あなたが今見ている物件のどの数字を、誰が、どういう計算方法で出したのか──そこを一つひとつ検証する習慣が、長期的に生き残る投資家と退場する投資家を分けている。

株式会社ウェルスターエージェンシー監修株式会社ウェルスターエージェンシー投資用1棟収益物件に特化した不動産仲介・コンサルティング会社。CF・IRR・DSCRを重視した数値ベースの投資判断と、融資戦略・出口戦略まで一貫して支援。東京都中央区に拠点を置き、首都圏・名古屋・関西圏の投資家へのアドバイザリー実績多数。宅地建物取引業免許 / 東京都知事(4)第92706号公式サイト wellstar-agency.com →

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配信: 株式会社ウェルスターエージェンシー

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