投資目的別(CF重視・節税・資産形成)の物件タイプの選び方の実情

WELLSTAR AGENCY COLUMN

「利回り8%の築古木造アパートと、利回り5%の新築RC──どちらを買えばいいですか?」先日、年収2,400万円の外科医・40代のT氏から受けた相談がまさにこれだった。数字だけ並べても答えは出ない。この問いに答えるには、まず「あなたは何のために不動産を買うのか」を確定させなければならない。CF(キャッシュフロー)重視、節税、資産形成──この三つは似て非なる戦略であり、同じ物件を買っても結果は大きく変わる。

目的が違えば「良い物件」の定義が変わる

CF重視、節税、資産形成という三つの目的は、しばしば混同される。「節税しながらキャッシュも稼ぎたい」「資産を増やしながら節税も」という欲張りなケースがほとんどだが、それぞれを最大化しようとすると物件タイプが矛盾する場面が必ず出る。

CF重視なら利回りが高い物件が有利だが、節税効果の高い木造築古物件は空室リスクが高く、CF安定性は低い。節税に適した新築木造は減価償却が短期間に集中するが、表面利回りは低く、CFはそれほど出ない。RCや重量鉄骨は資産価値の長期維持に向くが、利回りは低め、節税効果は耐用年数が長い分だけ薄く広がる。どれかを選ぶということは、他の何かを諦めることを意味する。

投資目的を先に決めないと、「利回りも高くて節税もできる」という売り文句に引っ張られ、どれも中途半端な物件をつかむことになる。

CF重視で選ぶなら「手残りの構造」を分解せよ

CFを目的とする場合、表面利回りだけで判断するのは危険だ。実務でよく使う指標は、実質利回り・NOI(純営業利益)・DSCR(債務返済余力比率)の三つで、このうちDSCRが1.2を下回る物件は銀行も難色を示すし、購入後のリスクも高い。物件のCF・IRR・DSCRは物件シミュレーションPro Ver.7.0で試算できるが、入力値の精度──特に空室率と修繕費の設定──が甘いと結果は全く信頼できないものになる。

CF重視に向く物件タイプ

CF目的で実績が出やすいのは、築15〜25年の木造アパート(8戸前後)か軽量鉄骨のアパートで、地方政令市か首都圏の郊外エリアに多い。価格帯は1億円前後、表面利回り8〜10%ゾーンに集中する。融資は地銀・信金が主体で、返済期間20〜25年が典型的な組み方になる。

ただし、CF重視物件には構造的な落とし穴がある。購入後5〜10年のうちに外壁・屋根・給湯器などの大規模修繕が重なる時期がくる。これを加味せずに「年間CF200万円」と試算している投資家が後を絶たない。現実的な数字は、修繕積立・空室損失(稼働率90%前後で計算)・管理費を引いた後で、利回りベースで1.5〜2%ポイントは削れると思っておいた方がいい。

表面利回り 9.2%
実質利回り(空室・管理費控除後) 6.8%
修繕費・大規模修繕積立控除後 5.1%
融資返済後の手残り(CF利回り) 3.4%

上記は築18年・木造8戸・購入価格9,500万円(融資8,000万円・金利1.8%・25年)の典型例だ。表面9.2%が手残りベースでは3.4%まで圧縮される。それでも税引前で年間CF約320万円になる計算で、会社員の副収入として十分な水準ではある。

節税目的なら「減価償却の設計」が先決

節税を主目的とする場合、物件そのものよりも「減価償却費をいつ・いくら計上できるか」の設計が本質だ。高所得の医師や経営者が好む手法は、木造の法定耐用年数を超えた築古物件(法定22年超)を購入し、4年の耐用年数で減価償却を一括的に計上するやり方だ。

たとえば購入価格8,000万円のうち建物部分を5,000万円と設定できれば、4年間で毎年1,250万円の減価償却費が計上できる。年収2,000万円の医師なら、この効果で所得税・住民税合算の実効税率50%超の層には相当な節税になる。計算上の税額軽減は年間600万円超に達することもある。

ただし、ここに深刻な落とし穴がある。「建物比率の高い契約」をするためには売主・買主双方の合意と合理的な根拠が必要で、根拠のない建物割合の積み増しは税務調査のリスクが高まる。さらに4年後に減価償却が終わると今度は不動産所得が一気に増え、却って課税が重くなる「節税の出口問題」が待っている。このタイミングで売却するか、法人へ移すか、保有し続けるかの判断を最初から設計しておかないと、節税が終わった後に手が打てなくなる。

節税目的で失敗するパターン

埼玉県川口市で1棟マンション(築26年・RC・12戸)を購入したB氏(50代・歯科医・既婚・子2人)の事例が典型的だ。購入価格1億3,500万円、表面利回り6.1%。建物比率を高めに設定して年間減価償却費1,800万円を計上し、最初の3年間は課税所得を大幅に圧縮できた。ところが4年目以降、減価償却がゼロになった途端に不動産所得が年間780万円発生し、給与所得と合算して実効税率55%超で課税されることになった。売却しようにも、RC築30年・川口市内という条件では流動性が低く、希望価格での売却は難しい状況が続いている。B氏は「節税で得た分と、出口で払う税金と手数料を考えると、正直トントンかもしれない」と苦い顔で話していた。

「節税で得た分と、出口で払う税金と手数料を考えると、正直トントンかもしれない」

B氏・50代歯科医・川口市RC12戸オーナー

節税は物件購入で完結するのではなく、出口戦略まで含めてトータルで設計しないと意味がない。個別の投資相談は不動産投資ページから受け付けているが、「まず節税ありき」の相談は、出口まで含めたシミュレーションを先に行うことを条件としている。

資産形成が目的なら「土地値と流動性」が本命指標

資産形成を目的とする場合、利回りや節税効果よりも「10年後・20年後に資産価値がいくら残るか」という視点が中心になる。この観点では、建物の減耗よりも土地の持分価値と立地の希少性が効いてくる。

資産形成型に向く物件は、都市部のRC造・重量鉄骨造で、坪単価の高いエリアに立地するもの。表面利回りは4〜6%程度と低いが、長期保有しても土地値が支えてくれるため、売却時のロスが出にくい。融資評価も高く、次の物件購入時の担保としても使いやすい。資産規模を増やすことを目標にするなら、最初の1棟をどれだけ「銀行評価の通る資産」にできるかが、2棟目・3棟目へのスピードを左右する。

横浜市神奈川区で1棟RCマンション(築11年・8戸・購入価格2億1,000万円・表面利回り5.3%)を保有するA氏(50代・製造業経営・配偶者と子1人)の判断がここでは参考になる。A氏は購入時点でCFよりも「担保価値の維持」を優先した。購入から7年後、この物件を担保に追加融資を引き出し、大阪市北区のRC一棟(10戸・1億8,000万円)を取得した。現在は2棟合計で保有資産3億9,000万円、年間CF税引前640万円という状態だが、A氏が語る「勝因」は利回りではなく「最初の物件で融資評価を積み上げたこと」だった。

「最初に利回りの高い物件を買っていたら、2棟目の融資は出なかったと思う。銀行が評価する物件を選んだことが、結果的に資産拡大につながった」

A氏・50代製造業経営者・横浜市RC8戸+大阪市RC10戸オーナー

三つの目的を「投資フェーズ」で切り替える発想

CF重視・節税・資産形成を「どれか一つを選ぶ」という二択的な発想で捉えると、視野が狭くなる。実務では、投資フェーズに応じて目的をシフトさせる方が合理的だ。

フェーズ 主目的 向く物件タイプ 注意点
1棟目(資産形成基盤) 担保価値・融資評価の蓄積 都市部RC・重量鉄骨(築15年以内) 利回りより立地・構造優先
2〜3棟目(節税局面) 所得圧縮・税負担軽減 木造築古(耐用年数超え) 出口設計を先に決める
中期〜長期(CF安定期) インカム収入の確保 郊外・地方政令市の木造・軽鉄アパート 修繕費・空室リスクの織り込み
出口・相続対策期 評価額の引き下げ・次世代移転 賃貸住宅(路線価・借地権割合の高いエリア) 相続税評価との整合確認

このフェーズ設計が機能するためには、手持ちの資産・収入・借入余力・税率をセットで把握していることが前提になる。自分が今どのフェーズで、何億円規模まで投資できるかを確認したい場合は、1棟投資 購入力診断で30秒で分かる。数字を見てから相談する方が、議論の密度が全く違う。

「何のために買うか」が決まらないうちは買ってはいけない

CF・節税・資産形成のどれを選ぶかは、投資家の年齢・収入・家族構成・既存資産・出口イメージによって変わる。一般解はない。ただ、15年で数百件の取引に関わって感じるのは、失敗する投資家に共通するのは「物件を先に決めて目的を後付けする」という順番のミスだということだ。

「この物件、利回りも高くて節税もできますよ」という売り文句は、目的があいまいな投資家を引き寄せるために設計されている。利回り重視の物件は節税効果が薄く、節税重視の物件は流動性が低い。資産形成向きの物件はCFが細い。これは特定の物件が悪いのではなく、目的と物件がずれているだけだ。

8〜10%
CF重視物件の表面利回り目安
4年
築古木造の短期減価償却期間
1.2以上
融資承認の目安DSCR

初めて1棟投資に踏み出す場合は、物件選びより先に「自分の目的の優先順位」と「借入可能額・税率・既存資産との整合」を確認する時間をとってほしい。はじめての1棟投資 無料相談では、物件の話より先にこの整理を一緒にやることが多い。それくらい「最初の目的設定」が、その後の結果を左右する。

数字を信じすぎず、構造を見る目を持つ

「表面利回り10%」「減価償却で年間1,000万円節税」「10年で資産3億円」──どれも数字として間違ってはいない。ただ、その数字が成立するための前提条件を全て満たすのは容易ではない。空室率・金利・修繕費・出口価格・税制の変化──一つでも想定がずれれば試算は崩れる。

数字を使って判断することは必要だが、数字を「信じる」のではなく「検証する」姿勢が求められる。自分で前提を変えて感度分析をやる習慣があるかどうかが、数字で判断できる投資家と、数字に騙される投資家を分ける。

あなたが今、CF・節税・資産形成のどれを第一目標に置いているか、即答できるだろうか。その答えが出てから、物件を探す順番が正しい。

株式会社ウェルスターエージェンシー監修株式会社ウェルスターエージェンシー投資用1棟収益物件に特化した不動産仲介・コンサルティング会社。CF・IRR・DSCRを重視した数値ベースの投資判断と、融資戦略・出口戦略まで一貫して支援。東京都中央区に拠点を置き、首都圏・名古屋・関西圏の投資家へのアドバイザリー実績多数。宅地建物取引業免許 / 東京都知事(4)第92706号公式サイト wellstar-agency.com →

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