金利上昇局面での固定・変動選択|1%差で数千万円損得する判断基準

WELLSTAR AGENCY COLUMN

先日、埼玉県川口市で3棟を保有するKさん(40代・会社員・既婚・子2人)から相談を受けた。「変動で借りてきたが、今後の金利上昇が怖い。全部固定に切り替えるべきか」という内容だった。話を聞くうちに、Kさんが固定と変動の「金利差」だけを見ていて、保有期間・出口・次の融資余力という変数をまったく織り込んでいないことが分かった。この三つを無視した状態で固定に切り替えると、Kさんのケースでは総支払額が約1,800万円増える試算になった。

「金利1%の差」は、総額でいくらになるか

まず数字を置く。借入額8,000万円・返済期間25年・元利均等返済で、変動1.5%と固定2.5%を比較すると、毎月返済額の差は約3.3万円になる。25年間の累計では約990万円。さらに固定への切り替えコスト(保証料・事務手数料の再負担)が発生する場合、実質1,200万円超の差が出ることもある。

これだけ聞くと「変動の方が有利では」という結論に飛びがちだが、実際はそう単純ではない。問題は「いつ・どれだけ・どのタイミングで」金利が動くかという読みと、投資家自身のポートフォリオ構造が絡み合う点にある。

変動1.5%|総返済額 約1億1,900万円
固定2.5%|総返済額 約1億2,900万円
変動が3.0%まで上昇した場合|総返済額 約1億3,500万円

上の試算(借入8,000万円・25年・元利均等)が示すのは、変動が2.5%を超えて上昇し続ける局面では、固定との差が逆転するという事実だ。ただし「どこで上昇が止まるか」「いつ売却するか」によって、逆転が起きる前に出口を迎えるケースも多い。

固定・変動の損益分岐は「保有期間」で決まる

固定と変動の損益分岐点は、金利差÷年間上昇幅という単純な計算では出ない。実際の返済シミュレーションを組むと、現状の変動1.5%が毎年0.2%ずつ上昇する前提でも、保有期間が10年以内なら変動の方が総コストは低くなるケースがほとんどだ。逆に15年・20年と長期保有を想定するなら、金利上昇リスクを固定で遮断する合理性が生まれる。

ここに「出口戦略」が絡む。10年後に売却予定なら、固定の高い金利を20年分払い続ける必要はない。一方で「子どもに相続させる」「永久保有」を前提にするなら、変動の金利上昇リスクは正面から向き合わなければならない。

固定・変動の選択は「気持ちの安心感」ではなく、売却予定時期・次の融資余力・ポートフォリオ全体のDSCRという三軸で判断する。この三軸が揃わない状態でどちらかを選んでも、それは判断ではなく賭けだ。

変動金利で破綻する投資家が持つ共通点

変動金利で苦境に立たされる投資家には、構造的な共通点がある。返済比率が高い状態で変動を選んでいること、だ。

具体的な事例を挙げる。横浜市保土ケ谷区で1棟マンション(築23年・6戸・購入価格7,200万円・表面利回り8.1%)を保有していたM氏(50代・自営業・既婚)は、2019年に変動1.2%で融資を受けた。当初の返済比率は52%で、ギリギリ許容範囲に収まっていた。問題は2022年以降の金利見直しで変動が段階的に上昇し、返済比率が58%を超えた時点で空室が2戸重なったことだ。月次のキャッシュフローがマイナスに転じ、半年後に物件を売却せざるを得なくなった。売却益は出たものの、当初想定の5年保有計画が3年で強制終了し、減価償却の税メリットを活用しきれないまま終わった。M氏が後に語った言葉が印象に残っている。

「変動にしたのは金利が低かったからだけど、返済比率を見直さなかったのが失敗でした。上昇余地を全く計算していなかった」

M氏・50代自営業・横浜市

変動を選ぶこと自体が問題なのではない。変動を選びながら、返済比率に「上昇バッファ」を持たせなかったことが失敗の本質だ。具体的には、現行金利から+1.5%上昇した場合でも返済比率が55%以内に収まるかどうかを事前に確認する必要がある。物件ごとのCF・DSCR試算は物件シミュレーションPro Ver.7.0で確認できるので、保有物件全棟の数値を今一度洗い直してほしい。

固定金利が「割高な保険」になるケース

固定金利が合理的な選択になるのは、長期保有・相続対策・次の融資余力の確保という条件が重なるときだ。逆に「なんとなく不安だから固定にした」という判断は、投資効率を確実に下げる。

大阪市淀川区で2棟を保有するS氏(60代・元会社員・既婚・子3人)のケースが分かりやすい。S氏は2021年、1棟目(築18年・8戸・購入価格9,500万円・利回り7.4%)を変動1.4%、2棟目(築12年・10戸・購入価格1億2,000万円・利回り7.0%)を固定2.2%で取得した。当初は「2棟目を固定にしたのは失敗では」という声もあったが、3年後の現在、このバランスが絶妙に機能している。1棟目(変動)の金利が上昇して返済が増えても、2棟目(固定)の返済額は変わらないため、ポートフォリオ全体の月次CFが安定している。さらにS氏は70歳での相続を想定しており、2棟目を子どもに引き継がせる際に返済額が確定していることで相続計画が立てやすいというメリットも享受している。

このケースで注目すべきは、S氏が固定と変動を「分散」したことだ。全棟変動でも全棟固定でもなく、保有期間・出口・次の融資余力を物件ごとに考えた結果、自然に分散が生まれた。「分散しよう」と意図したわけではなく、物件ごとに最適解を選んだ結果がそうなっただけだという点が肝だ。

+1.5%
変動選択時に想定すべき上昇バッファ
55%以内
上昇後も維持すべき返済比率の目安
10年
固定・変動の損益が逆転し始める保有期間の目安

金融機関が「固定」と「変動」を使い分ける本当の理由

銀行側の論理を理解すると、選択の視点が変わる。金融機関が変動金利を低く設定するのは、金利変動リスクを借り手に転嫁しているからだ。銀行は短期プライムレートに連動させることで、調達コストの上昇を返済額に反映できる。一方、固定金利は長期国債の利回りをベースに設定されるため、銀行が長期にわたる金利変動リスクを負う代わりに、金利を高く設定している。

つまり変動を選ぶとは「金利変動リスクを自分で抱える代わりに、当初コストを安くする」という契約だ。これを理解せずに「変動は安いから」という理由だけで選ぶのは、リスクの引き受け手として名乗りを上げながらリスク管理をしていないという矛盾になる。

金融機関の担当者も、投資家の財務体力を見ながら固定・変動どちらを勧めるか変えている。返済比率が高い投資家、次の物件購入を検討している投資家、自己資金が薄い投資家には固定を勧めることが多い。逆に、自己資金比率が30%以上あり、他の保有物件からのキャッシュフローが潤沢な投資家には変動を容認する傾向がある。自分が引ける融資規模は1棟投資 購入力診断で30秒で分かるので、次の物件を検討する前に現在地を把握しておいてほしい。

2棟目以降の投資家が見落としがちな「融資余力の毀損」

中級投資家が固定・変動の選択で特に見落としやすいのが、次の融資余力への影響だ。固定金利を選ぶと毎月の返済額が高くなるため、金融機関が融資審査で使う「年間返済額」が膨らみ、次の物件への融資枠が縮小することがある。

返済比率は借り手の財務体力を測る指標として金融機関が重視するが、固定金利の高い返済額が「既存債務」として計上されると、新規融資の審査で不利になるケースがある。特に地方銀行・信用金庫では、既存物件の返済状況を月次キャッシュフロー単位で見るため、返済額の絶対値が大きいと「この投資家は次の借入余力が少ない」と判断されやすい。

これは「固定が悪い」という話ではなく、「固定を選ぶ際には次の拡大計画と連動させて考える必要がある」ということだ。1棟目を固定にして安定させながら、2棟目は変動で取得し、全体の返済バランスを設計するという戦略も有効だ。

判断軸 変動が優位なケース 固定が優位なケース
保有期間 10年以内で売却予定 15年超・相続まで保有
返済比率 +1.5%上昇後も55%以内 現状でギリギリ・上昇余地なし
次の融資計画 当面は拡大しない 2〜3年以内に追加取得を検討
自己資金比率 25%以上確保できている 15%前後でフルローンに近い
ポートフォリオCF 他物件からの余剰CFが潤沢 この1棟がCFの柱になっている
出口の柔軟性 市況に応じて売却タイミングを選べる 出口が固定・相続税対策が優先

今、変動で借りている人間が取るべき現実的な対応

すでに変動で借りている投資家が今できることは、金利上昇を「ゼロにする」ことではなく「上昇の衝撃を吸収できる状態にする」ことだ。具体的には三つの行動になる。

一つ目は、手元流動性の積み上げだ。変動金利が+1.0%上昇した場合の年間増加返済額を計算し、その12〜24か月分を現金で確保しておく。借入8,000万円なら+1.0%で年間約80万円の増加となるため、160〜240万円を「変動リスク準備金」として積む。CFから毎月積み立てる仕組みを作るだけでいい。

二つ目は、保有物件の売却候補の明確化だ。金利が上昇した場合に「どの物件を最初に売却するか」を今のうちに決めておく。市況が悪化してから考え始めると、損切りか塩漬けかという二択しか残らない。今の市況で売れば利益が出る物件を把握しておくことが、変動リスクの「出口保険」になる。

三つ目は、借り換えの選択肢を定期的に棚卸しすることだ。現在の変動金利が将来の固定金利水準に近づいてきた時点で、固定への借り換えを検討するトリガーを設定しておく。「変動2.0%になったら固定に切り替えを検討する」というように、感情ではなく数字で判断基準を持つことが重要だ。個別の融資戦略相談ははじめての1棟投資 無料相談で整理できる。金融機関との交渉戦略も含めて、現状のポートフォリオを持ち込んで話してみてほしい。

固定への切り替えを「安心のため」に決断するのは、コストとして払う覚悟があるなら間違いではない。ただ、その「安心料」の金額を自分で正確に把握した上で払うのと、漠然と不安だから払うのでは、その後の判断の精度がまったく異なる。

あなたの保有物件は、今の変動金利が+1.5%上昇しても持ちこたえられる構造になっているか。その問いに即答できない投資家は、今すぐ数字を確認する価値がある。

株式会社ウェルスターエージェンシー監修株式会社ウェルスターエージェンシー投資用1棟収益物件に特化した不動産仲介・コンサルティング会社。CF・IRR・DSCRを重視した数値ベースの投資判断と、融資戦略・出口戦略まで一貫して支援。東京都中央区に拠点を置き、首都圏・名古屋・関西圏の投資家へのアドバイザリー実績多数。宅地建物取引業免許 / 東京都知事(4)第92706号公式サイト wellstar-agency.com →

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