事例から学ぶ追加融資を引き出す物件評価の上げ方の重要ポイント

WELLSTAR AGENCY INVESTMENT COLUMN

不動産投資において、1棟目の購入はスタートに過ぎません。多くの投資家が直面する課題は、2棟目、3棟目へと買い増しを進めるための「追加融資」をいかに引き出すかという点です。金融機関は、投資家の所有物件が「適切に管理され、含み益や十分なキャッシュフローを生んでいるか」を厳格に審査します。

物件評価を向上させることは、単に資産価値を高めるだけでなく、銀行からの信頼(クレジット)を積み上げる行為に他なりません。本稿では、実例を交えながら、評価向上のための具体的な手法と、金融機関との良好な関係を築くための戦略について解説します。

1. 金融機関が重視する「2つの評価軸」

追加融資の審査において、金融機関は主に「積算評価」と「収益評価」の2つの側面から物件を評価します。これらの違いを理解し、バランスを整えることが重要です。

評価項目 積算評価(原価法) 収益評価(収益還元法)
評価の対象 土地の公示価格と建物の再調達価格 物件が生み出す将来の純利益(NOI)
重視する金融機関 地方銀行・信用金庫(担保重視型) 日本政策金融公庫・ネット銀行(事業性重視型)
評価向上のポイント 繰上返済による債務圧縮 賃料アップ、稼働率の向上、経費削減
リスクの見方 売却時の換金性 空室リスクや金利上昇への耐性

2. 事例から学ぶ:収益評価を劇的に改善するステップ

築年数が経過した物件であっても、管理運営(プロパティマネジメント)の質を高めることで、金融機関の評価を覆すことが可能です。以下は、空室が目立っていたRC造マンションの評価を改善させた手順です。

STEP 1: コスト構造の可視化と削減
共用部の電気代(LED化)、エレベーター保守点検費の見直し、火災保険の最適化を行い、運営費(OpEx)を年間5%削減しました。
STEP 2: 入居者ニーズに即した設備投資
無料インターネットの導入や、宅配ボックスの設置を行い、賃料を維持したまま稼働率を85%から97%へ向上させました。
STEP 3: 滞納リスクの排除
全ての契約を保証会社必須に切り替え、家賃収入の安定性を証明。金融機関への収支報告書(レントロール)の信頼性を高めました。
STEP 4: 改善後の実績による再評価依頼
1年間の安定稼働実績をエビデンスとして提出。収益還元価値が高まったことで、次の融資への「担保余力」として認められました。

3. 構造別・融資評価の特性と戦略

建物の構造によって、金融機関が算出する耐用年数や評価額は大きく異なります。追加融資を目指す場合、ポートフォリオ内での構造バランスを意識することが重要です。

RC造
(47年)

重量鉄骨
(34年)

軽量鉄骨
(27年)

木造
(22年)

※グラフ:法定耐用年数の比較(期間が長いほど長期融資が受けやすい傾向)

RC造(鉄筋コンクリート造)は耐用年数が長く、積算評価も高く出やすいため、担保として非常に強力です。一方、木造は評価の減少が早いものの、利回りが高い傾向にあります。追加融資を狙う際は、木造でキャッシュを貯め、RC造で担保を確保するという組み合わせが効果的です。

4. 財務健全性を示す「DSCR」の重要性

金融機関が追加融資の可否を判断する際、最も注視する指標の一つがDSCR(借入金償還余裕率)です。これは、年間の純収益が借入金返済額の何倍あるかを示す指標です。

DSCRの計算式と目安

DSCR = 年間純収益(NOI) ÷ 年間元利返済額

  • 1.3以上: 一般的に健全とみなされ、追加融資の可能性が高まる
  • 1.0未満: 収支が持ち出しの状態であり、極めて厳しい評価となる
  • 評価を上げるコツ: 金利交渉による返済額抑制、または自己資金投入による借入比率の低減

5. 税務戦略と融資評価のジレンマ

節税を重視しすぎて利益を圧縮しすぎると、金融機関からは「返済能力が低い」と見なされます。追加融資を勝ち取るためには、戦略的な納税が必要です。

項目 融資にプラスの影響 融資にマイナスの影響
経常利益 黒字を維持し、自己資本を増やす 過度な経費計上による赤字決算
減価償却費 キャッシュフローの源泉として説明可能 (特になし、ただし帳簿上の赤字には注意)
役員借入金 資本金と同等と見なす銀行もある 不明瞭な資金移動と見なされるリスク

6. リスク管理と出口戦略の提示

金融機関が恐れるのは「出口(売却)が取れないこと」です。評価を上げるためには、所有物件をいつ、いくらで売却できるかのシナリオを明確に提示する必要があります。

1. 市場流動性の証明: 同エリアの成約事例を収集し、担保価値が維持されていることを示す。
2. 大規模修繕の計画: 計画的なメンテナンス履歴を提示し、建物の寿命(経済的残存耐用年数)を伸ばす努力を証明する。
3. 簿価と実勢価格の乖離: 購入時よりも土地価格が上昇している場合や、返済が進んで簿価が下がっている場合、その「含み益」を数値化して資料化する。

7. まとめ:評価向上は「信頼の可視化」

追加融資を引き出すための物件評価向上は、短期間で成し遂げられるものではありません。適切な管理による収益の最大化、地道な債務圧縮、そして正確な財務状況の開示という、誠実な賃貸経営の積み重ねが、結果として金融機関からの高い評価に繋がります。

評価向上のための重要ポイントまとめ

  • 収益性の追求: 経費削減と稼働率向上により、DSCRを1.3以上に保つ。
  • 担保力の維持: RC造など資産価値が落ちにくい物件を核とし、債務を計画的に減らす。
  • 透明性の確保: 月次の収支報告や修繕履歴を整備し、銀行担当者が稟議を書きやすい資料を提供する。
  • 長期視点の出口: 売却を見据えたメンテナンスを行い、資産の流動性を確保する。

次の1棟に向けた準備は、現在の所有物件を磨き上げることから始まります。本稿で紹介したポイントを一つずつ実践し、強固な投資基盤を構築してください。

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